【感想】行動経済学入門(日経文庫)

最近「行動経済学」の本を読み,「行動経済学って面白い!」と思ったので,何回かに分けて読んだ本を紹介しようと思います.私にとっては,

  • 人のとる行動(考え方)には,共通する部分が(かなり)ある

ということが驚きでした.なぜなら,この事実は「行動経済学」を学ぶことによって

  • 失敗を防げるようになる
  • 他人の行動を予測・コントロールできるようになる

可能性を意味するからです.


今回紹介するのはこちらです:

行動経済学入門 (日経文庫)

行動経済学入門 (日経文庫)

特徴

POINT

  • 興味を引く主要な事実がコンパクトに纏まっている.
  • 末尾の「ブックガイド」が便利.
  • 数式も使って詳しい説明を心がけているので,数式が苦手な方は注意.

日経文庫から出版されている入門書です.この本の特徴は,なんといっても「薄い・小さい」ことです.最初に「行動経済学」に興味をもったときに,ざっくりとした内容を知りたくて手に取りました.


「読み物」として面白いのは

  • 第3章:近道を選ぶと失敗する

です.この章では「人が共通して間違えてしまう問題」について解説しています.この章で紹介している事実を使えば,印象をコントロールしたり,自分の失敗を防いだりすることができるかも知れません.


「株式」に興味のある方は

  • 第5章:非合理的な投資家は市場を狂わす

がおすすめです.ある種の逆張り戦略の有効性を検証した研究や,債券よりも株式の方がリターンが高いという歴史的事実の紹介があります.


章によっては数式を使って詳しく説明しているので,すべてを理解しようとするとそれなりに大変です.数式に抵抗のある方は,まず書店で手にとって見てみることをおすすめします.


この本の末尾の「ブックガイド(本の紹介)」も参考になります.私は「ブックガイド」の内容を読んで,ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」を購入しました.この本についても,いずれ紹介したいと思います.

印象に残った内容

参考に,個人的に印象に残った内容を章ごとに列挙します(注:要旨ではありません).「→」以下は私の感想です.少しでも気になる内容があれば,ぜひ読んでみてください.
  • 第1章
    • 多くの人が直感で「確率」を正しく見積もれない例がある.
      →伝え方で印象をコントロールできる/される可能性があるので,「確率」が関わる問題には注意が必要!
  • 第2章
    • 少数の人の非合理的な行動(限定合理性)が,互いに影響を打ち消すことなく全体に大きな影響をもたらす可能性がある.
    • 各個人の少々の損を気にしない行動(近似合理性)が,全体としては大きな影響をもたらす可能性がある.
  • 第3章
    • 証拠が不十分な場合は「自信過剰」になりやすく,十分な場合は「自信過小」になりやすい.
      →通常,証拠が十分な場合はありえないので,自分が「自信過剰」になっていると思って行動すべき.
  • 第4章
    • はじめに持っている価値基準(参照点)からの損得では,「損」から感じる影響のほうが2〜2.5倍大きい(損失回避性).
      →「〇〇すると損」と訴えると,「〇〇すると得」訴える半分以下のコストで済む.
    • 参照点から離れると,追加で感じる損得は小さくなる(感応度逓減).
      →すでに損していると思っている人は,もっと損することに抵抗を感じにくくなっている.また,参照点を高く設定し損失領域を考えさせると,リスキーな選択に誘導できる.
  • 第5章
    • 投資家は株価に過剰反応するため,逆張りが有効(株価が予測できた例).
    • 株式は債券よりもかなりリターンが高いという歴史的事実がある(株式プレミアム・パズル).
  • 第6章
    • 先延ばしすることによる価値の増え方は,近い将来ほど大きく,遠い未来になるにつれ緩やかになる.
      →「直前になって急にやりたくなくなるリスク」を常に考えておく必要がある.
  • 第7章
    • 賃金水準を高めに設定することで,労働者は最低レベルよりも高い努力をするという実験結果がある.
  • 終章
    • 人間の「非合理性」は意思決定におけるコスト削減という意味では「合理的」.
      →間違っていてもスピーディーに意思決定して行動する人の方が成功しそうなイメージがある.

プライバシーポリシー

お問い合わせ